2025年 5月14日
UV-C LED殺菌装置を搭載した充填機を発売
UV-C LED殺菌装置を搭載した充填機を発売
~日亜化学工業・武藤工業・四国化工機の技術が融合した水銀フリーな殺菌装置~
四国化工機株式会社(本社:徳島県板野郡北島町、代表取締役社長:植田滋)は、日亜化学工業株式会社(本社:徳島県阿南市、代表取締役社長:小川裕義)が製造する深紫外線LED(以下、「UV-C LED」とします)を使用したUV-C LED殺菌装置(以下、「LED殺菌装置」とします)の開発を進めておりましたが、武藤工業株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役社長:礒邊泰彦)での装置化および四国化工機での検証が完了し、このたび、LED殺菌装置を搭載した充填機を発売いたします。
LED殺菌装置は、四国化工機が製造するデザートカップやボトル用の充填機に搭載して、カップやフィルム、キャップを殺菌する用途に使用します。LED殺菌装置を搭載した最初の充填機は、2025年10月に四国化工機の取引先への納入を予定しており、2025年6月に東京ビッグサイトで開催される展示会「FOOMA JAPAN 2025」においてLED殺菌装置の実機展示を行います。
LED殺菌装置でカップ、フィルム、キャップを殺菌するイメージ
※画像はイメージであり、UV-C LEDを青色LEDに変更して撮影しています。
◆開発の背景と展望
昨今、全世界でSDGsや脱プラスチックなど環境に配慮した取組みの必要性が叫ばれるなか、水銀についても規制強化が進んでいます。四国化工機では、デザートカップやボトルなどの充填機に搭載するカップやフィルム、キャップ用の殺菌装置として水銀ランプを使用しております。現在のところは代替技術が無いことから水銀使用禁止規制の対象外となっていますが、今後規制が強化されることも予想されます。また、水銀ランプは作業性における課題も抱えています。
これらの課題を解決し脱水銀社会を実現するべく、水銀フリーな殺菌装置であるLED殺菌装置の開発に取り組むことになりました。波長280nmのUV-C LEDを製造する日亜化学工業の技術、UV-C LEDの性能を最大限発揮させるための電気制御や冷却方法に関する武藤工業の技術、殺菌性能の検証や必要スペックの最適化など食品用充填機に搭載するための四国化工機の技術が融合し、LED殺菌装置を開発することができました。
さらに、四国化工機が国内市場で約70%、海外市場で約20%以上のシェアを有する屋根型紙容器成形充填機についても、殺菌装置をLED化する検討を行っており、日亜化学工業および武藤工業と連携して更なる技術開発を進めてまいります。
◆基本仕様
※カップ用、フィルム用はカビを99.9%殺菌する装置の仕様、キャップ用は枯草菌を99.9%殺菌する装置の仕様です。枯草菌を対象としたカップ用、フィルム用の装置の仕様は現在検証中です。
◆特長① 水銀不使用による環境負荷の低減
現在、四国化工機の充填機は、カップやフィルム、キャップの殺菌装置として水銀ランプを使用しています。
しかし、環境汚染への懸念から、水銀を使用した製品の規制が世界的に強まっています。欧州においては有害物質使用制限指令(RoHS指令)により、2023年2月から水銀を含有している大部分の蛍光灯の製造や販売が禁止されました。また、水俣条約でも、一般的な蛍光灯は、既に日本をはじめとする大部分の国で製造、販売が禁止されています。殺菌用の水銀ランプについては、代替技術が無いことからRoHS指令の適用除外となっていますが、全世界的な流れとして水銀フリーが要請されています。
このような状況のなか、LED殺菌装置は水銀ランプを代替する技術に該当しますので、欧州を中心に、殺菌装置の水銀使用に係わる規制を変える可能性があるインパクトの大きい技術開発です。
◆特長② 省エネルギーで高い殺菌効果
四国化工機は、デザートカップやボトルなどの充填機に搭載する殺菌装置の性能(スペック)について、枯草菌を99.9%以上殺菌することをコンセプトとしています。以下の表の通り、水銀ランプに比べ、LED殺菌装置は少ないエネルギーで枯草菌を殺菌することができます。(*1)
●対象物1個当たりの消費電力
(*1)現段階での検証結果であり、内面の材質や色、容器形状により都度事前の評価が必要となります。
※カップ用およびフィルム用のLED殺菌装置の消費電力は、検証を継続中のため、見込みの数値です。
また、充填する内容物の種類や設定する賞味期間の長さによっては、枯草菌の殺菌に加え、クロコウジカビの殺菌も必要になることがあります。枯草菌と同様に、クロコウジカビについても99.9%以上殺菌するにあたっては、以下の表の通り、水銀ランプに比べ、LED殺菌装置は少ないエネルギーで殺菌することができます。(*2)
●対象物1個当たりの消費電力
(*2)現段階での検証結果であり、内面の材質や色、容器形状により都度事前の評価が必要となります。
1個当たりの減少幅はわずかですが、1時間に10,000個以上を生産する充填機の能力を考慮すると、大きな省エネルギー効果が見込めます。
さらに、LED殺菌装置は基板上でLEDの配置を自由に変更することができ、容器の材質や形状に合わせて最適な仕様にすることが可能です。
◆特長③ 作業性の向上
水銀ランプの出力は、ランプ内の水銀蒸気圧と温度に左右されます。水銀ランプの起動時には、ランプ内の水銀蒸気圧が低くランプの温度が安定しないため出力が低くなり、安定するまでに10分程度の待機時間が必要です。一方、LED殺菌装置は電気をそのまま紫外線に変える仕組みであるため、装置の電源を入れるとすぐに出力が安定し、殺菌が可能となることから、起動時の時間的ロスが無くなります。
さらに、水銀ランプは、カップ殺菌用ランプとフィルム殺菌用ランプとで灯数や仕様が異なっているため装置を共通運用できない点に加え、安全性基準は満たしているものの、紫外線の拡散による周辺部品の劣化やオペレーターへの悪影響も課題となっています。一方、LED殺菌装置では、カップ殺菌用基板とフィルム殺菌用基板を統一しています。また、LEDには直進性があるため、装置外への紫外線の拡散が少なくなり、周辺部品への影響やオペレーターの負荷を軽減し、作業環境を大幅に改善することができます。
また、水銀ランプは劣化して割れてしまう場合があり、割れた場合は飛散したガラスや水銀の回収作業が発生し、充填機を安全な状態で再度運転できるようになるまでにかなりの時間を要します。一方、LED殺菌装置は割れることもなく、水銀を使用していないため、安全に使用できます。
◆特長④ 長寿命
充填機に搭載している水銀ランプの寿命は2,000時間程度でしたが、UV-C LEDの寿命は約10,000時間を想定しており、約5倍となります。
水銀ランプは、電極を電気エネルギーで高温にし、電極間で電子を飛ばしますが、その際に電極が消耗します。また、水銀ランプは、管内に水銀が封入されており、水銀原子に電子が当たり励起して発光する仕組みですが、徐々にその水銀原子がガラス管に吸着して気化されなくなることで気化サイクルが狂い、出力低下につながります。このような電極の劣化と水銀の吸着などの要因により、寿命が短くなってしまいます。
一方、LEDはp型半導体(ホールが多い半導体)とn型半導体(電子が多い半導体)を接合した構造を持っています。この素子に電圧をかけると、電子がホール(正孔)と結合し、余ったエネルギーが光として放出されます(紫外線LEDの場合は紫外線が放出されます)。今回採用したUV-C LEDは無機材料で構成されており、光や熱による劣化が起こりにくいため、寿命が長くなっています。LEDはジャンクションと呼ばれるp-n接合部の温度が高くなると、素子の出力が低下しやすい傾向がありますが、LED殺菌装置では放熱構造を工夫することで温度上昇を抑え、長寿命を実現しています。
さらに、水銀ランプでは点灯のON-OFFを繰り返すことで電極が消耗し、ランプの寿命が短くなる要因となりますが、LEDは点灯の繰り返しによる寿命への影響はありません。
◆日亜化学工業について
徳島県に本社を置く、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)などの光半導体分野とリチウムイオン電池の正極材や蛍光体などの機能性化学品分野の2つの部門を事業の柱とする研究開発型企業。製造品目は各分野で世界トップクラスのシェアを維持しています。
◆武藤工業について
MUTOHホールディングス株式会社(東京証券取引所スタンダード上場)の中核企業として業務用の大判インクジェットプリンタをはじめ、3Dプリンタ、ドラフター、CADシステム、事務機器等の多様な事業を展開。機械遺産にも登録されている「ドラフターMH-1」という日本初の設計製図機械の発明以来「ものづくり」のDNAは現在の主力事業へ受け継がれています。それらの経験・ノウハウを基盤として、新たにUV-LED照射器を核とした光応用事業を将来成長の牽引役として展開してまいります。
◆四国化工機について
液体食品充填包装機の製造販売などを行う「機械事業」を主体に、デザートカップや飲料ボトルなど食品用パッケージを扱う「包装資材事業」と、さとの雪ブランドの豆腐や油揚げ・惣菜等の大豆加工食品を製造する「食品事業」を手掛けています。食に関わる三事業を併せ持つことの相乗効果を最大限に発揮し、最先端のテクノロジーを基盤とした技術開発力や、他社にはできないニッチ分野に特化した商品企画力などを活かして、世界の食文化の向上に貢献しています。
◆関連リンク
・日亜化学工業プレスリリース https://www.nichia.co.jp/jp/newsroom/2025/2025_051401.html
・武藤工業プレスリリース https://www.mutoh.co.jp/whatsnew/pdf/info_20250514_01.pdf